アパレル販売A社の売上改善

ベテラン戦略コンサルタントが全力でサポート

背景

ファッション・アクセサリなどの販売を行うA社は長年業績悪化に苦しみ、ついにはファンド資金を導入して経営再建を図ることとなりました。最初の1年は大幅なコスト削減や不採算店舗の整理を行うことで一定の収益改善は実現できたものの、売上高の低下に歯止めがかからず終わりなきコスト削減に陥る懸念が現実化しつつありました。

客単価が高く顧客売上比率が高い同社の業態上、新規出店した店舗が収益を上げるには数年がかかる状況であったため、まずは数十店舗ある既存店の売上高を回復させることが必須でした。


Step1:現状分析

まず最初に2つの現状分析を行いました。一つは店舗別の売上実態分析、もう一つは顧客の動態分析です。各々の分析は1名☓1週間でクイックに仕上げ、現場の部門長と議論を繰り返すことで精度を上げていきました。

現状分析1 売上実態分析

A社は全店の売上が日報形式で展開されていました。項目としては、客数、売上高、顧客数、顧客売上高、新規顧客獲得数といった形で重要な情報は確認できるようにはなっていましたが、各係数を構造的に見ることができない状況でした。

そこでまず、売上高をフリー売上高と顧客売上高に分け、各売上高を客単価と客数に分けました。また、新規顧客獲得数をフリー客数で割って「顧客獲得率」という指標を新たに設定しました。これによって全ての指標が構造的に繋がり、売上高を要因別に分解して理解できるようになりました。

さらに各店の売上推移を過去2年に遡ってグラフ化することで、各店の売上高の増加や減少の要因が構造的に見て取れるようになりました。ある売上高が増加し一見好調に見えていた店は客数が減少しており、その後ほどなく売上が減少に転じたり、フリーに強いと言われていた店舗の売上成長の要因が顧客売上の拡大であることが分かるなど、現場の部門長の認識を覆す事実が次々と明らかになりました。

現状分析2 顧客動態分析

もう一つの「宝の山」は顧客の購買データでした。会社の基幹システム上では通常のPOSデータ管理のみで顧客個人への紐付けができていなかったのですが、基幹システムとは別に、店舗別に手入力で作成されたデータベースがあり、主に顧客へのDM発送リスト作成用に使われていました。

売上実態分析の議論をする中で現場の部門長から話があり、ある店舗のデータを共有してもらいました。1万件以上ある購買データを分析することで、顧客数やアクティブな顧客の比率、毎年何人の顧客を獲得し、何人が離反してゆくかといった動きの実態が明らかになりました。

さらに売上改善策の仮説を作りながら分析を掘り下げることで、どのようにして顧客を獲得し、育て、定着させてゆくか。また、いつ何をすればその確率を上げることができるかといった、売上拡大への方程式が見えてきました。


Step2:戦略検討

戦略コンサルタントは戦略を立案する人と思われがちですが、実効性のある戦略を戦略コンサルタント単独で作ることは不可能です。事業には現場の実態があり、現場では細部が重要です。外部のコンサルタントはハイレベルな戦略は作ることはできるかもしれませんが、戦略の実行まで考えれば現場のアクションへの落とし込みが必須であり、それには現場との共同作業が必要不可欠となります。

今回のケースでも現場との議論に十分な時間を使いました。前述したように初期分析は1週間程度で完了させ、まずは主力部門の部門長と膝詰めで分析結果(Findings)を共有し議論を深めていきました。その部門長の声がけにより、社内の他部門や、その部門の中で戦略的な検討を担うスタッフも参加するようになり、議論はより深く網羅的なものになっていきました。

現場との議論のもう一つの効果は、戦略がより単純化・洗練化されてゆくことです。初期分析では10以上の改善点や施策がありましたが、日々の業務でも忙しい現場であれもこれもと新しいことを行うのは困難です。現場との議論を通してより重要なポイントだけが抽出され、基本動作は大きく3点、売上拡大への取組みとして最重要な一つのKPIだけを追求することが決まりました。

また、このように現場との議論によって戦略や方針を決めるプロセスを踏むことにより、参加した部門長やスタッフが「自分が作った戦略だ」と思えることが重要です。上から押し付けられたものではなく、自分が作ったものとして、自然とその実行にコミットしますし、自分の言葉で部下や関係者にも伝えてゆくことができます。これは戦略実行にあたって極めて強力な推進力になります。


Step3:戦略展開

部門長らとの議論で戦略を構築する一方で、社長を含めた経営陣とも議論を重ねて認識合わせを徹底しました。その上で、実行にむけて各店舗の店長や店内の主要スタッフに向けた説明会を開催しました。

これまでの議論で洗練された戦略を、さらにシンプルに分かりやすくスライドにまとめ、地域ごとに店長に集まって戴いて丁寧に説明をしていきます。社長や部門長も同席し、戦略検討を行ったチーム全員で現場最前線の店長・スタッフの巻き込みを図ります。夜は一緒に食事をして様々な話をし、戦略実行に向けて一体となって戦う仲間としての結束を固めていきました。

これと並行して進捗管理の仕組みも構築します。先に行った売上実態分析の形で店舗別売上の改善進捗が見えるように、基幹システムのデータをもとに数値を更新できる仕組みを作り、管理部門のスタッフに業務を引き継ぎました。効率的なExcelシート設計によって1〜2分の作業だけで資料を作成できるようにし、さらに従来時間をかけて作っていた業績管理資料を廃止することで、スタッフの業務負担を減らしつつ、より効果的な業績管理ができる体制を構築しました。

そして戦略実行のための具体的な活動の準備も行います。第一段階として3ヶ月の活動を設定し、具体的に何をすべきかの説明を店長に行い、各店ごとに目標設定をしてゆく。店舗支援部門のスタッフと一緒に詳細な準備を進めていきました。

戦略展開で盛り上がった士気を損なわないよう間を置かず直ちに展開するスピード感が重要であり、店舗支援部門のスタッフに丸投げするのではなく、戦略コンサルタントが作業を分担し、作業スピードの強みをフル活用してサポートしました。


Step4:実行支援

業績の悪化した会社の現場は疲弊していることが多々あります。実行不可能な予算を押し付けられ、プレッシャーを感じながら売り場に立ち、結果、予算を達成できずに叱責される。一方、厳しい状況が続いても会社に留まり働いているスタッフは、会社への強い愛情とロイヤリティを持っています。業績悪化局面の戦略実行では特に、こうした現場の心情に配慮して行動することが重要と考えています。

戦略推進チームとの間で、批判や叱責をしない、ポジティブなことを言い続けることをルール化しました。「できていない」ことを「伸びしろ」と言い切り、成果やそれに関わった人を徹底的に持ち上げて褒める。できない人は徹底的に助ける。

特に成功事例の横展開は徹底しました。うまく動いた、成果を出した店舗には必ず話を聞きに行き、そこで得たコツやヒントを山程集め、成果が出ずに苦しんでいる店舗に「これをやってみたら」というアイデアを湯水のごとく注ぎ続ける。実働をコンサルタントでなく店舗の現場経験のある店舗支援チームのスタッフに行ってもらうことにより、店舗の現場に響く言葉で伝えてもらうことを図りました。

大きな成果が出た時には、社長や部門長にも周知徹底し、直接言葉をかけてもらうこととし、さらに社内報などのメディアもフル活用して進捗を社内に周知しました。動画配信も効果的との話が出たため、別途Youtubeで限定公開チャネルを立ち上げて動画配信も行いました。(通常の戦略コンサルティングファームでは行いませんが、動画編集からチャネル立ち上げまで全てをサポートしました)

こうした様々な活動の結果、戦略実行の第一段階という重要なステップを、全社員一丸となって走り切ることに成功しました。


成果

成果は劇的なものでした。取り組み開始後たった1ヶ月で、第一段階で取り組み対象としたKPIが劇的に改善しました。基本的な戦略を一通り全店に説明した後、第一段階の具体的な取組内容について店舗を回って説明する活動が完了する前に既にその状況になっていました。

業績改善に一番飢えていたのは現場の店舗スタッフであり、最初の戦略説明で成功への道筋を明快に示し、チーム形成をしたことが大きかったようでした。第一段階の取組を待望し、直接説明しに行くより前に他の店舗に話を聞いて実行に移した店も多かったと聞きました。

店長立ちの取り組みへの感謝と驚くべき変化を社内報や動画配信で伝えつつ、3ヶ月後に第二段階の取り組みを開始。そして取組開始後半年を待たずに既存店売上高の昨年対比比率が6%ポイントも改善し、業績回復に向けた大きな一歩を踏み出すことに成功しました。


メッセージ

フルスイングでは、こうした形で基礎分析から戦略検討、実行までをフルサポートして成果実現まで並走します。なお、本件はアパレル業界での初めてのプロジェクトであり、業界知見を活かした活動ではありません。戦略コンサルとしての様々な経験を使い、できることは何でもするというスタンスでフルコミットし、現場スタッフと協働することで業界知見を補完して実現した活動です。どのような業界・局面においても同様の成果は実現し得るものと考えています。

あなたの会社でどのような成果が出せるかは、是非個別にご相談ください。