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福島原発の事故については、電源の回復と淡水の注入までは行ったものの、高い放射能を持つ溜まり水が見つかった影響で復旧作業が思うように進まない状況になっている。
2号機のサブレッションプール破損の可能性があったり、現地の放射線量がなかなか下がらないことから何らかの放射能漏れがあることは想定されたので溜まり水の件自体はそれほど驚かなかったが、溜まり水の検査結果の発表に関する東京電力の混乱にはやや不安になった。東京電力の業務量がキャパシティを超えて混乱しかけているような印象を持ったからだ。
元来、この事故は一企業が対応できる範囲を超えたものになっている。だから政府がリーダーシップをとって事態の収拾にあたっていたと思うのだが、十分なリーダーシップがとれないまま、負担が当事者である東京電力に行ってしまっているように見える。
ここで言うリーダーシップというのは、まず第一に事態を把握して解決策の大まかな道筋を示すこと。特に東電という一企業の枠内での思考で行き詰まる点を軌道修正してゆくことが重要だ。
これまでの大きな意思決定で言えば、冷却に海水を使う(≒廃炉の決定をする)だとか、消防やコンクリート充填の特殊車両を放水に使うといった施策がとられたのは良かった。しかし、その後が続いてこない。冷却を淡水に戻すのも米軍がプッシュして機材まで出す提案をしてようやく動いたが、こういうのはもうちょっとプロアクティブに動けないものかと思う。
第二には東電に現場対応に集中させること。現場対応は東電の協力なしには何もできないのだから、まず東電にここに100%集中してもらう。
現場ではいろんな対応が必要になるから、方針を出したらその実行にはとやかく口を出さない方が良い。また、東電自身が記者会見をやらざるを得なくなってしまったのも好ましいとは言えない。当事者の責任として全く会見しないという訳にはいかないだろうが、これを頻繁にやっていては現場に集中できない。事態を掌握している政府がメディアを納得させるだけの説明ができないといけない。
一方、政府側に原子力の知見ある人材が十分でないわけで、それが故に東電の報告に基づいて説明したり意思決定せざるを得ないという苦しさがあるよう見える。
でも、それならば外部の専門家の知恵を借りるやりかたもあるだろう。現場からの報告にしても、あれを出せこれを出せと要求ばかりでは現場負担を増やすのではなく、現場知見がある人を投入して現場にあるデータから欲しい情報を独自にまとめさせた方が良いかもしれない。この辺りはうまくアレンジする余地があると思うのだが、未だにうまく行ってないように思う。
計画停電の話も同様で、これも一企業の範疇を超えた問題になってきている。東電には努力をしてもらわなければならないが、それは計画停電を精緻にやりましょうという話ではないはずだ。改善の方向性を別のところで決めて、そのために必要な技術面・運営面のブレイクスルーを東電に頑張ってもらう方が良い。
原発問題も計画停電の問題もなかなか解決しないとイライラが募ってつい東電を非難したくなってしまうのが人情というもの。でも、いたずらに東電を責めて彼らの現場への集中力を削ぐ形になるのは逆に好ましくない。大事なのは政府のリーダーシップであり、これを正しく発揮してもらうことを期待したい。