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エクセルは非常に自由度が高くて使いやすい反面、油断するとすぐに構造が混沌としてブラックボックス化していきます。そうなると検証や引き継ぎもしにくくなるし、何よりバグが出た時に大混乱に陥ることとなります。
だいたいそういうことが起こるのは徹夜明けとか重要なクライアントミーティング直前とか、あまり余裕が無い時だったりしまして、まぁそういう時の絶望感と言ったらないです。経験された方は分かるでしょうが。。
エクセルってそういうものだよね、って意見もあるでしょうけど、ちゃんと注意をすればそういう事態は避けることはできます。
その意味で、私が常々ジュニアメンバーに注意している点をいくつか書き出してみます。いずれも細かいんですが、結構重要なポイントです。
ダメ① バージョン管理をしない
同じファイル名のままどんどん更新をしていくやつですね。会社としてこういう運営をしているところも結構あるんじゃないかと思います。共有サーバにファイルを置いて、皆で修正できるようにして。他のファイルからのリンクがされているので、ファイル名を変えるとリンクが切れてしまうから、という場合もあると思います。
でも、これは絶対避けた方が良いです。
バージョン管理をしないと、関係者が違う数値をもとに資料を作ったり議論したりするといったことが起こります。こうなると議論のベースが合わず大混乱。後で検証しようとしてもどのデータを使ったか追跡できないので検証できません。
面倒でもファイルのバージョンは管理する。自分のファイルだけでなく、元データのバージョンもしっかり記録しておくことが重要です。
ダメ② 外部リンク
これも結構やってる人が多いと思うんですが、外部ファイルへのリンクはなるべく避けた方が良いです。
第一の理由は①でも書いたバージョン管理の問題。リンク先のファイルがこっそり修正されていると、自分のファイルのバージョンが同じでも数字が変わるといったことが起こってしまいます。
第二の理由は情報管理の問題。外部ファイルへのリンクはファイル名だけでなく、どのフォルダにあるかも含めたフルパスの記述で記録されています。ファイルを共有すると相手にそのフォルダ構造がばれてしまいます。勿論フォルダ名が問題なければ無問題ですが、通常そこまで注意していないので、リスクは避けた方が無難です。
第三の理由は、データを呼び出しに行く時間がかかることです。ファイルを開く特に「データを更新しますか」というダイアログが出てワンクリック、小さいですけどこういう無駄な時間が積み重なると無視できなくなっていきますので、芽のうちにしっかり摘んでおく習慣を付けたほうが良いです。
外部の参照データは、自分のファイルのデータシートとして取り込みましょう。シートまるごとコピーして値貼り付けするのが安全です。元データのファイル名と時間を記録しておくことも忘れずに。
ダメ③ 非表示のシートやセル
見た目と実際が異なるのは、ミスの原因になります。
例えば、部門Aと部門Bでシートを分けてP/Lを作成した場合で、見た目は一緒ですが部門Bでは行中に非表示の行があったとします。そうすると、部門Aで使った計算式をコピーしても部門Bでは違うセルを参照してしまいエラーになるといったことが起こります。
別の会社では、シートごとに店舗別P/Lを作っていて、閉店店舗のシートをを非表示にしていました。ところが全社合計ではそのシートも合計していたため、表示されているシートを見ているだけだと合計が合わず「???」という状態に陥りました。
細かい点ですが、こういったところでの混乱が忙しい中でリソースを消耗させる原因になります。なので、普段からこういうことをしない習慣をつけることが重要です。また、他からファイルを貰った時には、まずこの点をチェックしておいた方が良いです。
ダメ④ 表示が実体と違う
ちょっとトリッキーなんですが、エクセルでは表示形式の設定で、円単位で入っているセルの数字を千円単位とか百万円単位で表示することができます。
これを知らずに、そのセルを参照すると、思ってた数字と全然違う数字が出るので「あれっ?」となります。
単体参照ならすぐに気が付きますが、計算式の中の一つの参照としてこういうシートが含まれるとミスに気づかず、後々の大混乱の元になります。
②の最後にも書きましたが、シートをまるごとコピーして、自分のシートに値貼り付けするのがひとつのやり方です。このやり方であれば、③と④のトリックも同時にチェックすることができます。
ダメ⑤ セルの結合
セルの結合もできるだけ控えます。というのも、結合セルが含まれていると、値貼り付けができないのです。(貼り付け先のセルを同じように結合しておいてもエラーになります)
なので、基本的にはセルの結合は使わないようにしています。
クライアントがやるのは止めようがないんですが、データを取り込む際に、シート全体を選択して結合を解除するようにしています。そうすれば値貼り付けでデータを取り込めますので。
困るのは、2つに分けて記載している数字が、分けられないのでセルを結合して数字を入れている場合。これはそもそもデータが無いという話ですので、必要な補正策を考えないといけません。
そういう意味でも「結合ヤバい、要注意」という意識でいた方が良いです。
どれも結構細かい話なんですが、仕事をしっかりスムーズに進めていくためには結構重要なことばかりです。
実際の仕事の現場では丁寧に説明できなかったりして、「とにかく嫌だから止めてくれ」みたいな話をしてしまうことも多いのですが、これを読んだ方は是非、趣旨を理解した上で徹底して戴ければと思います。