中国について我々はまだ理解が足りない

(読了時間=約 2 分)

先日、尖閣諸島問題があって中国に関する熱を帯びた報道やコメントを数多く目にした。しかし、あるものは感情的であり、あるものは反中という暗黙の前提があり、またあるものは考察が浅いように見えてなかなか丁度良いものに当たらない。政治や外交の議論以前の問題として、中国という国の理解や日本としてこれをどう考えるべきかという議論がまだ十分消化されていないような印象を受ける。

まず理解しておくべきなのは、中国という国は近年稀に見るほどの成長をし、かつ、世界に大きな影響を与えるようになった国だということだ。下のグラフは中国の名目GDPの推移だが、90年代前半から経済が加速度的に成長しているのがわかる。ちなみに天安門事件は89年6月で、ベルリンの壁崩壊(89年11月)や東西冷戦時代の終結(89年12月)の頃の話だ。その後、90年半ばから中国は急成長し、世界の工場と言われるようになり、2000年代半ばには建設ブームにより世界の鉄鋼需給を逼迫させ、そして消費市場が立ち上がり始めた。全てはここ20年の間に起こった変化なのである。

Source: Google

変化の激しさを実感するために、もう一つのグラフを掲載する。世界のインターネット利用人口の推移だ。ご存知の通り、この90年代はインターネット時代の幕開けの時期でもあった。94年創業のアマゾンが01年10-12月決算で黒字化し、98年創業のGoogleが04年に上場し、同じ年に創業したFacebookが10年に5億人のアクティブユーザを獲得といった具合。ここ20年で市場そのものが大きく成長してあらゆるものごとが影響を受けただけでなく、市場の質や活躍するプレイヤーもどんどん変わってきた。

Source: Vizoo

もちろん中国の発展とインターネットとが直接関係するわけでもないし、国の話と産業の話を同列で比較するのも無理はある。ただ、急速に変化するものを理解するために何が欠けているかの示唆にはなると思う。

80年代のホストコンピュータ全盛の時代の認識で、インターネットビジネスを語れますか?単に市場が大きくなったということだけで議論できますか?もっと多くの前提が覆っているんじゃないですか?同じように、東西冷戦時代のパラダイムで中国を議論するのは妥当なのか?80年代から活躍していたコメンテーターの話だけを聞いていて今の中国を正しく理解できるのだろうか?

本屋に行けばネットビジネスの本が山ほどあり、また、ネット業界の最新情報を追う日本語のニュースメディアも数多く存在している。対して、中国に関する本はどうだろう?中国に特化した日本語メディアは?サーチナだけ?米国の大手メディアは数十人単位で記者を送り込んで中国での取材体制を強化しているけれども、日系の新聞社や放送局はどうだろう?

中国のGDPは今年日本を抜いて世界2位になった。消費市場では多くの品目において国別シェアで上位を占めるようになってきている。ビジネスの上でも、そして勿論、政治・外交の上でも無視できるような国ではない。個別の事象に興奮し、憤る前に、もっと基本的なところをちゃんと勉強すべきだと思う。

TVや新聞の報道もいいけれども、もっと他の人の意見も聞いてみたい。様々な面からの意見や考察をもっと見たい。そうして、中国の状況や国際社会の中での中国の位置付けなどを正しく理解することが、この状況に対する正しい判断を導くための基礎になると思う。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です