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スティーブ・ジョブズがアップルのCEOを正式に退任することが発表された。
発表タイミング自体はいろんな要因があって決まったものの、退任の直接の原因は彼の病気であることは明白だ。新しい時代の創造を牽引してきた天才が第一線を去らざるを得なくなったことは残念でならない。
昨年、iPadが登場した頃、ネットで下の写真の様なジョークが話題になっていた。iPhone、iPadとだんだんディスプレイサイズが大きくなってきたので、その次は・・、という話だ。

これ自体は単なるジョークだが、iPhone、iPadと製品が出るたびに仕事で使い倒してきた自分としては、ある意味リアリティのある未来予想図にも思えるところがあった。
以前のエントリでも書いた様に、僕はiPad購入を機にペーパレスに移行した。書類を全てスキャンしてデジタルデータにし、それをクラウドにアップロードして、PCやiPad、iPhoneどれでも参照できるようにしたわけだ。
ここでポイントになることの一つは、ディスプレイの数だ。紙というのは一枚一枚がA4サイズだとしても、それを並べて置くことで大量の情報を一覧できる。もちろん常に書類を並べて仕事するわけではないけれども、いざというときには、机の上や周囲に書類を並べたのと同じことをデジタルの世界でできていないと不便に感じる。
これは単純にディスプレイの数を増やせばいいといものではなく、それが共通の分かりやすいインターフェースで操作できなければならない。この意味において、iPhoneからiPadに至る流れは非常に期待を持たせるものだったし、上の写真のジョークも結構良いセンを突いているように思えたのだ。
「iBoard」は僕に言わせれば「iホワイトボード」だ。会議室のホワイトボードがタッチパネルになり、iPhone的なインターフェースで使えるようにしたら凄く便利だろう。また、「iMat」みたいに大きな画面ということで言うと、例えば会議室の机が全面タッチパネルになってたら凄く便利だ。これができたら会議で紙は不要になる。
それをさらに進めたような感じなのが、今年2月にYoutubeに特殊ガラスメーカーのコーニングによってアップされた「A Day Made of Glass… Made possible by Corning.」という動画だ。
5分半の動画ですが、飽きずに楽しめると思う。かなり良く作りこまれているのだ。印象に残るシーンをいくつか下記にピックアップする

まずは冒頭のシーン。
家中あらゆるところがディスプレイになり、テレビやメール、電話などがどこにいても使えるようになっている。

出勤のために車に乗り込むと、中はダッシュボードのほぼ前面がディスプレイ。当初は中央部分のみの表示だが、必要に応じてどんどん画面を広げてゆくことができる。

仕事場に行けば壁面全部がディスプレイになり、電話会議中の相手や資料が前面に表示される。机の上一杯に資料を広げているような雰囲気だが、全部ディスプレイに表示されたデジタル映像だ。しかもその一部は動画なので表現力が増している。

会議参加者が携帯端末を机の中に置くと、自分の資料スペースが設定されて端末のメモリにある情報を机の上に「広げる」ことができる。その資料をスワイプすれば、他の参加者にデータを渡すことができる。
そうそう、まさにそういうことなんだよ僕の考えていたのは、という感じ。
コーニングはガラスメーカーなので、「こんな凄いディスプレイが実現可能なんですよ」という表現の仕方になっているが、この実用化を支えるにあたっては、一貫性のある分かりやすいユーザーインターフェースが必要不可欠だ。
これはまさにAppleが長年培い、iPhone~iPadで実現してきたことに通じる。
一貫性のあるインターフェースというのは、ある一人の人間が統合的なイメージを構想するのが最も手っ取り早い。そして、ジョブズはそういうアプローチに最も適した人間だし、彼のマネジメントスタイルはまさにこういう局面で最大限その強みが生かされる。
ジョブズにはこういうところをやってほしかった。
今回の発表は、予想していたこととはいえ、改めて、非常に残念に思う。
多分、来るべき未来が10年くらい遠くなってしまったのだ。