衆議院厚生労働委員会での児玉龍彦氏

(読了時間=約 2 分)

元衆議院議員の早川忠孝さんのブログで「最高の弁論」というのがあって、何かと思って読んでみたら7月27日に衆議院厚労委員会での児玉龍彦教授(東京大学アイソトープ総合センター長)の人の参考人説明が凄かったという話だった。

映像がYoutubeに上がっているということで、さっそく閲覧してみた。

で、内容もちゃんと聞かなきゃと思い、下記のサイトにある発言内容の書き起こしを見たり、配布した資料も参照したりして理解しようと努めました。

・ 「放射線の健康への影響」児玉龍彦氏(内容完全書き出し)
・ 児玉龍彦さん発言の補足資料

まず冒頭、大量の放射性物質が放出されており影響を把握するために徹底した測定を行うべき、という話自体は同意。ただ、放出量の試算で広島原爆の29.6個分などと煽るのはどうかと思った。資料にはチェルノブイリとの比較もあり、福島の場合はチェルノブイリの1/10程度と試算されたと書かれている。本人も原爆と原発の汚染は違うと言っているのだから、こちらを使えばいいのに。

二番目はいろんな話が出てくるが要約すると内部被爆問題を深刻に考えるべきという話。ただ、前段のトロトラスト(トリウム)は造影剤として血液中に投与した場合の影響だろうし、ヨウ素131は影響が検証されているが半減期が短く長期的影響の議論とは別の話なので説得力がない。

その次に引用されているチェルノブイリの膀胱癌の研究(詳細はこちら)は初耳で、これはこれで興味深かった。ただ、これがどの程度学会で同意を得ているかがよくわからない。2009年の研究らしいので、それなりに反響が出ていても良さそうなものだけれども。

また、福島で7名の母乳から検出された放射性物質の量が、上記研究での膀胱での放射性物質の量と比較して同程度だから「愕然とした」というのも釈然としない。膀胱と母乳が同列で比較できるのかな。対象地域の土壌汚染の程度で比較した方が良いと思う。

三番目は論理展開はよくわからないが、子供を守れという話。これはまぁ心情的には同意。でも子供がバスで移動云々の話はこの説明だけではよくわからなかった。

で、結論に相当する4つの提案(実際には3つ)。ちなみに、これは良く見ると前段の話とはつながっていない。

第一の提案は、書き起こしを何度も読んだが日本語として意味がわからなかったが、推察するに計測を徹底してやれという話だと思う。これには合意。日本の技術力で可能というのは前回のエントリで紹介した富士電機の機械みたいなのを言っているのかもしれないが、ここの説明がもっとあったら良いと思った。

第二の提案は、子供の被爆を減少させるために努力している民間研究者を法的にサポートすべしという話で、これも同意。

第三の提案は、土壌汚染の完全なる除去に向けた体制を作り、国費の投入を行うべきだという話。これも正論で同意です。ただ、東レとかクリタとかがどんなノウハウを持っているのかという話や、国費投入するとしてどの程度の規模が必要なのかという概算があるともっと良かったのにと思う。

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ということで、前段については話にまとまりがなく、ネットでデマを流す人々の特徴(1.自分の権威付けをする、2.他の人が知らない事実を引用する、3.結論に導くロジックに飛躍がある、4.精神論・感情論で説得しようとする)を備えてしまっているのであまり説得力がなかった。

結論は前段の議論とは半ば独立していて、であるが故に、説明不足な部分が多いのだけれども、主張していること自体には納得感があった。特に、長期的に原発周辺の汚染地域をどう現状回復させるのかという問題提起は重要だと思う。こういう指摘がなければ、何となくうやむやになりそうにも思えるからだ。

冒頭の早川氏のブログだけでなく、ネットにはこの陳述について共感する声が目立つ。正直、このようなプレゼンをうちの社内でしたら徹底的にロジックの甘さを問い詰められてボロボロになること間違いないのだが、それはやっぱり特殊な業種だからということなんだろう。

改めて、人を動かすのは論理よりも感情なんだなぁと思った。

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