(読了時間=約 2 分)
ハイパーネットの創業者だった板倉雄一郎さんのブログの最近の投稿がtwitterで紹介されていたので読んでみました。(ITAKURA’s EYE(最終回)「14年振りの本業復帰」)
冒頭の一段落を引用します。
ある革新的アイデアを思いついたとき、同じようなアイデアを同じ時に思いつく人は、恐らく世界に1万人は居る。
アイデアを思いついた人の中で・・・
大部分は、アイデアを思いついた事だけに満足し、その可能性に気が付かない。
内1000人は、ブログやSNSを通じてアイデアをシェアし、少々の賞賛に満足する。
内100人ぐらいはアイデアを事業化する可能性を探る。
内30人ぐらいは、具現化にたどり着くが、多くはアイデアに起因しない原因で失敗する。
残った10人ぐらいが成功の島に取り付くが、小銭程度で当初の夢を売り払う。
最後に3人ぐらいが成功の島を手に入れる。
板倉さんの熱いメッセージはオリジナルの方で見ていただくとして、こちらはこれを読んで思い出したある映画の話に脱線します。
映画というのは、1977年に公開されたスピルバーグの映画、「未知との遭遇」です。UFO遭遇事件から始まり、最後に人類と宇宙人とのコンタクトが果たされるというSF映画。
ある晩、米国で大規模なUFO目撃事件が発生する。主人公であるロイ・ニアリーも目撃者の一人だった。目撃事件の後、彼は奇妙なイメージに悩まされるようになる。それは何かの形だが、何なのかがよくわからない。でも、日常生活でそれに似た形を見るたびに、もう気になってしようがない。家庭が崩壊してゆくのも構わず、彼はついに自宅の中に巨大な立体模型を作り上げてしまう。
同じ頃、政府は宇宙人との直接接触を試みる計画を進めていた。宇宙人から指定された場所はワイオミング州のデビルスタワー。接触予定日の直前、政府は鉄道事故で有毒ガスが放出されたということにして付近の住民を強制避難させる。
このデビルズタワー、主人公のロイが作り上げた立体模型そのものだった。TVのニュースでそれを知ったロイはレンタカーで現地に行き、封鎖を突破して中に入り込むが結局政府に身柄を拘束される。しかし再び逃げ出してデビルズタワーを上り始め、ついに山の裏側に設営された宇宙人とのコンタクト施設に入り込むことに成功する。。というような話。
派手な宇宙船や宇宙人の映像などSF的映像効果が話題になった映画だけれども、一部の映画解説で指摘されていたのが、いろいろな選択をする人が出てくる、というもの。つまり、ロイと同様のインスピレーションは、もっと沢山の人が抱いていたというわけです。
- ほとんどの人は漠然としたイメージを「気のせい」として具体化しなかった
- 一部の人はそれがデビルスタワーだと解明したが、そこで考えるのを止めた
- 20人程の人たちは、デビルスタワーまでやってきたが政府に拘束されて諦めた
- そしてロイを含む3人が移送ヘリから脱走し、山を登った
(冒頭の引用でこの話を思い出したわけです)
移送ヘリの中で、脱走しようとするロイを他の人々が止めようとする。
「ここまで来れたからもう十分じゃないか」
「これ以上は危険だ」
でも、そういう ”大人の判断” をした人たちは宇宙人との遭遇を果たすことができなかった。彼らは招待された人であり、そもそも衝動の目的はそれだったのに。
もう一つこの映画で面白いのは、抱くインスピレーションが極めて漠然としている点です。
それがUFOとの遭遇場所の手がかりだとわかっていればまだ話が早いのに、「何だかわからないけど気になる」という衝動だから始末が悪い。ロイは頭のおかしい人扱いされるようになり、周囲から孤立し、仕事も家庭も失ってゆきます。普通に生活に戻らなきゃと思いながらも、衝動を捨てきれない。夜中に庭に飛び出して「何なんだあれは~」とか叫んだり。もうこんな苦悩が中盤で延々と描かれています。
でも、新しいビジョンを追いかけていると結構こういうことってある気がします。
そういう意味で、SF話を副題にして、ビジョン実現に苦しむ経営者とか、芸術家の作品の生みの苦しみ、みたいなものをアナロジーとして表現した作品としてみると、非常に興味深い映画です。
今さら34年も前の映画で恐縮ですけれども、この映画は、ビジョンや夢を追う人は一度ちゃんと見てみたら面白いと思います。