能力をどう表現するか

(読了時間=約 2 分)

能力の評価基準の話をしたところで、今回は、人材評価に関わる議論の中で比較的多用される形容とその受け取られ方を思いつくままに書いてみる。

ポジティブな表現として使われる用語例

Quick Thinker
アタマの回転が早い人のこと。打てば響くとか、一を聞いて十を知るといった印象の人。当然ながら、こういう素質を持っている人はコンサルティング会社では歓迎される。

Deep Thinker
深くものごとを考えられる人のこと。将棋に例えると10手先・20手先まで読むような思考をする人。Quick thinker であっても思慮が浅い人はいるので、両者は別の概念として議論されることが多い。

Quick Learner
学習能力の高い人。全く経験のない業界でも、3-4週間あればひと通りの知識を吸収してクライアントとの議論ができるような人。あるいは、自身の改善課題をいち早く修正していける力のある人。

Self-starter
特に若手のコンサルタントを誉める時に出てくる言葉。指示されなくても自分で考えて動けるような人。自分でどんどん試行錯誤してゆくので、こういう人は成長が早い。

Solid / Reliable
仕事が堅い人。大きな失敗をすることがなく、安心して任せられる人。リスク感覚が鋭敏で、不測の場合の備えを忘れず不穏な空気をいち早く察知できる人であることが多い。

Strong Ownership
コミットメントという言葉もあるが、オーナーシップという言葉の方が好まれている気がする。他人事ではなく自らのものとして仕事に取り組む人のこと。

ポジティブだけど若干微妙な印象を受ける用語

Knowledge / Expertise
知識や経験があるのは素晴らしいことだが、人事評価の議論では若干複雑な空気が漂う。中途入社で凄く良いパフォーマンス出して期待されたが、実は経験のある業界だから持っている知識が使えたというだけで、他の業界のプロジェクトに入ったらからきし駄目だということが結構多いのだ。

知識・経験と思考力とは別であり、前者は蓄えたものを吐き出すだけで成長にはつながらない。知識・経験は材料としてなくてはならないものだが、それを活かすも殺すも思考力などの「能力」だ。能力を見る上で、知識・経験によるパフォーマンスの嵩上げはノイズになる。

勿論、知識・経験はあるべきなのだが、そこをハイライトする議論には皆ちょっと警戒感を以て臨むことになる。なので、若干場が微妙な空気に包まれるのだ。

Teamwork
実は、論理的思考力とチームワークというのは相反するところがある。だから、論理的思考に優れた人は人間関係が弱い場合が多く、それをいかに克服しているかという意味で、チームワークの指標を見ることが多い。

逆にチームワークに優れるが論理的思考が弱いという人は、中途採用などを中心に結構出現頻度は高い。でも、こういう人はこのままだと早晩行き詰まることになる。僕らの商売は結局のところ、思考力が大事なのだ。

難しいのは、チームワークの良い人というのは「いい奴」なので周囲があまりギチギチ追い詰めないことだ。この場合、本人的にはうまくやっている気になるが実際には全く成長できない。先に言った様に、論理的思考とチームワークは相反するので、チームワーク型で問題解決をしていると論理的思考力が鍛えられない場合があるのだ。

なので、能力評価の冒頭で「チームワークの良さが彼の強みです」などと言われると、全員がちょっと座り直す雰囲気になる。本人の成長を促すために、より精緻な議論が必要になるからだ。


コンサルティング以外の業界では人材の評価基準がそもそも違うので、これがそのまま参考になるとは思わない。

でも、例えば一般に「アタマが良い」とか「地頭が良い」などとやや感覚的な表現で話をされているのを、もう一段細かい要素で表現することができたとしたら、優秀な人材の能力の一面を正確に議論できる助けになるかもしれない。

そういったヒントになれば幸いです。

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