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福島原発の敷地内でプルトニウムが検出されたことで、また不安を煽るような記事を多く目にするようになってきた。以前のエントリにも書いた通りプルトニウムは重いので遠くまで飛散はしないのだが、毒性についての話は気になったので少し勉強してみた。例によって、自分の現時点での理解のまとめです。
- プルトニウムにおける「猛毒」の意味は青酸カリの様な化学的な毒ではなく異なり放射能が高いという意味での毒
- 放射能はの毒性はα線>ガンマ線。α線は透過力が弱いがそれは透過対象に多くのエネルギーを渡しているから。従って、透過力の弱い放射線ほど浴びると危険
- α線を出す放射性元素はウランやトリウム、プルトニウムなどが該当する
- 放射能の強さは半減期に反比例する(放射線は放射性元素が別の元素に変わる際に放出されるため)
- ウランやトリウムの半減期は長く、比較的短いウラン235でも7億年。一方プルトニウム239の半減期は2万4千年
- このため、重量当たりの放射能量で見ると、プルトニウム239はウラン235の2万8千倍にもなる
なるほど、これは確かに凄そうだ。では、これが漏れ出ると人間は即死なのだろうか。首都圏全域が青酸ガス室みたいなことになってしまうのだろうか?とちょっと不安になってくる。
でも、どうもそうではないらしい。
- 外部被爆のリスクは低い。α線は透過力が低いのでく紙一枚で防げる。紙がなくても間に数センチの空気があれば途中で消えてしまう
- プルトニウムを食べても体内にほとんど吸収されず99.95%が排泄されてしまう(体内に留まって長期間内部被曝することにはならない)
- 吸入による摂取の場合は、25%が肺に沈着しその後それが骨や肝臓に留まるので、リスクがあるとすれば吸入による内部被曝
- ただ、吸入による年間摂取制限値はセシウム(Cs137、0.047μg)と同程度の0.053μgであり、特にこれだけが極端に危険という様な形にも見えない
- 経口摂取の場合の制限値は、Cs137が0.024μgに対してPu239は48μg。つまり、000倍もの量を摂取しないと制限値に至らない
ものすごく大雑把にまとめてしまうと、プルトニウムはウランよりも猛毒だが、原発事故などで放射能汚染をもたらすのはウランではなくヨウ素131やセシウム137など。これらとの比較においては、プルトニウムだけが極端に危険というわけではない。
あと、何度も言うがプルトニウムは重いので遠くまで飛んでいかない。だから、現段階で東京在住の人が恐怖を感じる必要は全くないと思う。
参考資料:
プルトニウムのリスクと安全管理-JAEA(pdf)
プルトニウムという放射能とその被曝の特徴-京都大学原子炉実験所(pdf)
Artificial Radionuclides in the Environment 2007-気象研究所地球化学研究部
プルトニウム-Wikipedia