福島原発事故の今後

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3/27(日)に公開された「大前研一ライブ」を見た。ご存知の通り大前さんは元マッキンゼーの日本代表であり、戦略コンサルティングを日本に広めた人なわけですが、今回注目しているのは彼の前職が日立の原子力技術者だったというところ。業界に関する土地勘というか、知見を基に展開する議論については、コンサルタントとしての大前ファンでない人も一見の価値はあると思う。

特に、先日発覚した水漏れについての話(11’44”-18’44″)は原子炉の構造についての解説を交えて議論されるので分かりやすい。極東ブログのエントリ「どこから高濃度放射性物質が漏れたか、ワシントンポストを読む」を併せて読むと面白いと思う。

また、今後の見通し(20’45”-24’48″)、今後考えられるリスク(26’02”-35’26″)、長期的に問題となる放射性廃棄物の処理(37’37”-41’10″)なども興味深い。今後も見通しやリスクについて具体的に論じている記事が少なくて不満だったが、これを聞いて大分すっきりしてきた。

危機的な状況で大事なのは、最悪何が起こるのかを先に見通して手を打っておくことだと思う。もちろん、most likely なシナリオの下で目先の問題に対応することも重要だが、最悪ケースを想定しておくと、目先の努力が万一失敗した時に慌てずに対処できる。「縁起でもない」と敬遠したくなる気持ちもわかるが、最悪ケースを想定しておくことは、それを現実化しないための最も有効な手段なのだ。

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原発事故の被害予測は一つの研究分野になっているようで、検索すると論文がいくつか出てくる。中には卒論みたいなものもあるし、論文の趣旨・前提というのもあるので書いてある内容を鵜呑みにすべきではない。でも、この分野でどういう考え方がされているかを理解する助けにはなる。

ある論文の参考情報のところで、PWR型原子炉の事故形態の分類図というのがあって興味深かった。


出所:http://www.rri.kyoto-u.ac.jp/NSRG/genpatu/GotoYoko.pdf

事故レベルが高いところの記述は恐ろしい内容だが、水蒸気爆発などによって放射性物質が吹き上げられるのが最悪シナリオという話は納得感がある。東京まで影響が出たのは3号機の爆発の翌日で、その後は水漏れなどが続いたが周囲の放射線量は低下の一方だ。ちょろちょろ漏れている限りにおいては遠くまで汚染は及ばないものなのかもしれない。

BWRについても同じような研究はあるはずで、そういうものをもっと専門家の人たちが発信してくれると良かったのにと思う。

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さて、大前さんが指摘するように事故対応の長期化が避けられないようであれば、長期戦に耐えられるような体制や兵站を構築することが必要だ。事態が落ち着きつつある今は、実はそういった体制構築をするチャンスでもある。これはいろいろな面からの話が考えられる。例えば、

  • 現地の作業員は敷地内の建物で雑魚寝して一日2食の乾パンという作業員の環境で頑張っているが長期的には疲弊してミスを起こすリスクがある。近隣の施設を借りて宿泊施設とし、食料供給などの兵站を整備して作業の後方支援を充実させる
  • 放射線等の測定地点を増やし、原発周囲の状況を正確かつリアルタイムに近い状態で把握する。また、作業員の浴びる放射線量もまとめて管理する。これは牽制上、東電ではない第三者が行う
  • 非難地域の住民について、問題が長期化する可能性が高いことを伝える。一時帰宅は許容するが、風向きなどによって危険になる場合もあり得るので、周囲の測定体制と連動した避難手順を明確化する

ちょっと思いつくだけでもこれだけある。事故発生直後は急いで対応すう必要があり臨時の急ごしらえで対応したが、長期戦になるにあたって、しっかりとした「ルーチンワーク」を構築して sustainable(継続可能) な体制にするわけだ。必要に応じて自衛隊や消防、米軍や外部の専門家に協力を仰いでベストな体制を作っていけば良いと思う。時間はある。

政府には是非、こういったリーダーシップを発揮して欲しい。

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