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何日か前に枝野官房長官のことを書いたが、その後も枝野氏はあの通りの仕事振りで、なんだかあちこちで人気になってきているみたいだ。広報の視点からということで彼の対応を分析する記事も出てきたりで、いろいろ面白い。
スポークスマンとしての技術的には確かにそうだと思うけど、もう一つ改めて指摘したいのは、彼の感情を抑えた喋り方だ。非常に厳しい状況下であるにも関わらず、辛いとか悲しいといった表情を出さず、実務に集中している。その声のトーンや喋り方から、強いコミットと意思を感じる。
これが聞いていて心地良さを感じる要因になっている。
菅直人総理も震災後何度かスピーチしているが、眉を寄せて悲痛な表情で話をするのが見ていて痛々しい。被災者の方々への同情を表しているのかもしれないし、また、実際に仕事が忙しくて疲労しているというのもあるのだろ思うけれども、それは表情には出してほしくない。リーダーは強く頼もしい方がいい。
同じ理由で蓮舫大臣のスピーチも見ていられない。何であんなに泣きそうな顔してスピーチするのだろう。事業仕分けでバリバリやっていたあの強さはどこに行ったのか。しかも内容が「買いだめしないで」だったりするともう何というか、調子が狂ってしまう。見ていていたたまれない気持ちになってくる。
そんなことをつらつら考えていた折に、一昨日のことになるが、天皇陛下がビデオを通じてメッセージを発表された。
何が感銘を受けたといって、陛下の表情・口調が平時のそれと全く変わらないことだった。また内容も、大災害を憂う言葉から始まるものの、被災者をはじめとした国民に向けた慈愛に満ちた言葉で終わり、本質的には普段陛下から発せられるメッセージと同じ方向のものだった。
今、何だかんだで皆不安をかかえている。地震の恐怖と今も続く数々の問題からくるこの不安を乗り越え、元の生活を取り戻したい。そんなことを誰もが心の底で望んでいる気がする。東京だとそんなに被害もないわけで、見た目は通常に近い生活を取り戻せるはずだけれども、どことなく肩に力が入ってしまっていて何だかちょっと違う気がする。普通ってどうだったっけ?と思ったりしてまた不安になる。
でも、天皇陛下は全くお変りなかった。現在の状況をしっかりご覧になりながらも、その立ち位置と視線はいささかもブレていなかった。一貫性を保とうと力む風情は微塵もなく、極めて自然に、ごく当たり前の様にそのスタンスを維持されている。
それを感じたことが、これほどまでに聞いていて心が落ち着いた原因ではないかと思った。何というか、地震で見失っていた軸を取り戻したような気がした。
Youtubeのコメントによると、このメッセージは日本の象徴たる陛下の言葉として重く受け止められ、翻訳されてヨーロッパ中で放映されたそうだ。
NASAの分析では今回の地震で地軸が若干ズレたらしい。
でも、日本の軸はブレなかった。
それを世界に示せて良かったと思う。