地震後8日目-原発関連

(読了時間=約 3 分)

福島原発の動き

昨日に引き続き地上からの放水で三号機のプールに水を入れる試みが為された。電源復旧工事は今日はできなかったようで、連休中ということになりそうだ。

TV報道だと情報がよくわからないので下記のソースを見るようになってきた。METIのサイトでは保安院のリリースが掲載されていて、それなりに分かりやすい資料にしようという改善努力が感じられる。それぞれの資料の間で若干の情報の齟齬がある部分もあるが、見比べていると自分なりの理解を作ることができる。

福島第一原発概況(衆議院議員 服部良一の国会奮闘記)
地震被害情報(METI/経済産業省 報道発表)

ここ数日、大きな手が打たれていないものの、新たな爆発などの劇的な変化は起こっていない。東京電力の発表する放射線量データは測定場所が正門から西門メインになってしまったが、正門で言う500-600μSv/hレベルからあまり変化がない。高い値ではあるものの、1,000μSv/hを超えていた状況から回復し、15日火曜日午後の水準まで下がっている。

New York Times が16日(水)までの放射線の推移と爆発や火災などの事象をまとめたグラフを作成している。いくつか放射線が上がる瞬間はあったが、ピークが過ぎても500SV/h程度までしか下がらなくなったのは火曜日午後以降。この直前に起こった事象は二号機の爆発(格納容器破損)と四号機の火災、そして三号機からの白煙の3つ。三号機からの白煙については一時期格納容器の破損が疑われたが、保安院の資料を見るとそれは否定されたようにも読める。となると怪しいのは二号機の格納容器破損ということになる。

出所:New York Times

放水は明らかに対症療法だが、使用済み燃料の排熱は弱くて変化がかなりゆっくりなのでそれなりの時間は稼げそうに思える。あと、今日夕方河野太郎さんがTwitterで三号機の使用済み燃料はMOX燃料(プルサーマル原子炉に使われる毒性の強い燃料)ではないと言っていたので、これが本当なら心配の種が少し減る。

今後、事態のコントロールを取り戻すことを考えた場合に期待できそうなのは電源回復だ。ただし、電源が回復しても冷却装置がすぐに稼働できるわけではない。相応の調整が必要であろうし、三号機は爆発があり、放水で水浸しになったりしているので問題いろいろあるはずだ。ただ、現地は放射能レベルが高くて長時間かかる複雑な作業は困難だろう。なので、「(1) 二号機の格納容器からの放射能漏れを塞ぐ」のと「(2) 放射能を浴びながら冷却装置を直す」のどちらから進めるかの選択が必要になるかもしれない。

原発事故に関する状況分析記事

MIT原子力理工学部による改訂版・福島第一原発事故解説

以前紹介したMITの分析をより分かりやすく加筆したもの。解説記事はいろいろ見たが未だにこれは一番分かりやすいものの一つだ。

MIT NSE Nuclear Information Hub

こちらも同じくMIT。英語だけれど、Google翻訳あたりを活用すれば語学力に自信なくても概要は理解できると思う。 あと、普通の記事だけれどもなるほどと思ったのがこれ。

米軍が無人偵察機で事故原発の調査(WSJ)

米国が派遣したチームの中に「事後管理評価チーム」というのがあるのが目を引いた。目先の危機回避、そしてその抜本的改善は必要だが、長期戦になることは確実であり、環境への影響も無視できない。そういう意味で「事後」の影響評価や状況管理のためのチームを組成することは大事だと思う。

いろいろ情報が錯綜しているので、見たがボツにしたものも一応挙げておく。この辺は意見ある人もいるだろうから、あくまでも個人的な評価ということで。

・大地震後の東電福島第一原子力発電所の状況(推定):岡芳明・早大教授
・福島原発:ロシア科学者たちの分析
この二つは事実関係の認識が自分の理解と若干違ったため、その先の分析に納得感を感じなかった。

・ニュースの深層3/17(木)「福島原発事故」(広瀬隆)
RTで回ってきたので見てみたけど、聞くに耐えない内容だった。その意味で最初二つとはレベルが違うが、ネットで結構話題になっているようなので敢えて載せておきます。

東京への影響

東京の放射線量については日野のナチュラル研究所のデータなどを見ているが大きな変化はない。そもそも地震後で大きな数値をつけたのは15日(火)の正午前のみであり、原発正門前で500μSv/hが定常的に観測されるようになっても何ら変化は見られていない。

15日正午前後は四号機で火災があったり三号機で白煙が上がったりしていた時期であり、午前9時には正門前で11,930μSv/hが観測されたが、それが260km離れた東京に直ちに運ばれるとは考えにくい。前日(14日)の11:01の三号機の爆発あたりの影響ではないかと思う。

日野市ナチュラル研データの考察(田中幸雄さん)(pdf)
この分析でも15日のピークの要因を14日のできごととしていますが、11:01の三号機の爆発ではなく18:00すぎの二号機の安全弁開放による可能性が高いとしています。

福島第一原発3号機爆発の映像 爆発の激しさを思い出すためのご参考。ちなみにこの映像は刺激が強すぎるためかNHKでは未放映。Youtubeでも一号機の爆発より明らかにアップされた動画本数が少ない。近いうちにこれも削除されてしまうかも。

 いずれにしても、
1. これほどの爆発があった前後でようやく影響が観測された
2. 影響が観測されたのは約24時間後
3. 数値は上がったが1μSv未満であり、影響は極めて軽微

巷の噂では核爆発が起こるとかいうのまであるけれども、専門家も指摘する通りこの可能性は低いと思う。とすると、最悪のシナリオは水蒸気爆発か何かで放射性物質が大量に吹き上げられてしまうこと。これはないという分析も読んだけど、自分的には未だ納得できていないので、一応可能性は否定せずに考えている。

ただ、もっと大規模な爆発が起こると吹き上げられたダストがジェット気流に乗って広範囲に拡散するはず。チェルノブイリで200km圈に汚染地域が広がったのもそのせいかも。ただ、ジェット気流は基本的に西から東に流れるので、福島から東京に流れてくるとは考えにくい。そのまま太平洋をわたってアメリカ西海岸に到達するというコースになると思う。

だから、三号機の爆発程度の爆発があり、かつ、吹き上げられる放射性物質が相当多くないと東京でも健康に影響が出るまでにはなりそうにないと思う。

ということで、自分的には、東京はまず影響はないという結論に至った。

やれやれ、これでようやく海外の連中にメール返信が書ける。 でも長いメールになるので、かえって「どんだけ必死だよ」とか言われそう。。。

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