能力評価(2/2)

(読了時間=約 3 分)

1-4. コミュニケーション

調査分析し、優れた洞察で示唆を出したら、後はそれをクライアントに伝えなければならない。その能力も当然ながら評価対象になる。これはさらに、WritingとOralの二つに分かれる。

Writing communication というのは文書作成能力のこと。報告資料は通常パワーポイントになるが、これがちゃんと作れないといけない。パワーポイントに熟達しているかどうかという話ではなく、明快なスライドを作成できるかということだ。

資料の作成についてはかなり細かいルールが定められている。例えば、1つのスライドの結論は一つでなければならず、それはヘッダ(表題部分)に記載されていないといけない。スライドの本体部分に書かれている内容は、表題に書かれた結論を支持するようになっていないといけない。「いろんな見方ができる資料」では駄目なのだ。

用語表現も勿論重要だ。「100人程度の首を切る必要があります」とか資料に書く人がいるけど当然NGだ。仮にただしくても、もっと言い方がないのかよ、ということになる。我々の仕事は非常に微妙なテーマを扱うことも多いので、ちゃんと配慮をしたmatureな表現をすることは重要な能力の一つとなる。

Oral communication というのは口頭でのコミュニケーションだ。

資料を作ったら、それをしっかりプレゼンテーションできなければならない。もごもご言って何だかよくわからないとか、緊張してしまってしどろもどろになるのは最悪だ。上の役職になれば、単にメッセージを伝えるだけでなく、それが心に響くようなプレゼンを目指すことが求められる。

プレゼンの後はディスカッションだ。自分の作ったパートについてのクライアントの質問や反論に対してはきっちり答えるべきだし、担当外の部分についても必要に応じて議論に参加することが求められる。意外にも、フリーな議論になると無口になる人が多いが、この業界に入ったからにはその殻を破ってもらわなくてはならない。

所謂「仕事の質」だけでこれくらいあるのだが、さらに人間関係のスキルも評価項目になる。

2-1. チームワーク

まずは心を開いてうまくやること。チームメンバーとうまくやることだけでなく、クライアント側のチームにもうまく溶け込めるか、ということも重要だ。

次に、イライラしないこと。厳しい時間制約や、難題に当たってストレスが溜まってもそれを出さない忍耐強さが求められる。イライラしたり、キレたり、パニックなったりはNGだ。

さらに、チームへの献身も求められる。自分の担当した仕事だけキッチリやったら後は知らんぷり、では駄目。他の人の議論にも前向きに参加し、必要な指摘をしたり、助けたり、ということが自然にできなければならない。

2-2. 上下の巻き込み

自分より下のメンバーをケアする。時々声をかけてよき相談相手になってあげる。マネージャーに言えない愚痴を聞き、正しい方向にうまく導くのは先輩社員の役目だ。また、若手社員の見本(role model)になることも期待される。

上のメンバーを巻き込むことも重要だ。パートナーやマネージャーに適宜適切に報告したり議論に誘ったりしてプロジェクトに巻き込んでゆく。そうすることで彼らのコミットを引き出し、プロジェクトを安定させる。勿論パートナーも担当プロジェクトにはコミットする意思はあるが、下からもそれを活発化するような働きかけが求められるのである。

2-3. 自己の成長

自分の成長に強い意欲を持ち、それに基づき行動することが求められる。

まず、フィードバックを積極的に受ける。他人への駄目出しは喧嘩の元なのでやりにくい時もあるので、駄目出しされる本人が積極的に意見を聞きに行く姿勢が求められる。勿論対象は上司だけではない、同じレベルの人間や、下の人間にも適宜フィードバックを求めるようにすべきだ。

次に、フィードバックを受け入れる。耳の痛い話を聴くと素直に受け取りにくい。だから、仕事の状況でやむを得なかった、とか、あの人とはたまたま相性が悪かった、という話で終わらせたがる。でも、多くの場合、そうではなくて何らか正しい指摘であることが多い。それにちゃんと向き合うのは一つのスキルだ。

最後に、示された課題を改善してゆくことにコミットする。「俺は生涯一コンサルタントだ」と格好つけるのは良しとされない。目指すべき頂に向けて、歩み続ける力が求められる。

2-4. Work Life Balance

仕事と人生とのバランスをうまくとること。この業界では仕事をしすぎて家庭を壊したり、身体や精神を壊してしまう人が多い。そこで、こういう項目がわざわざ人事評価の項目としてビルトインされている。

これは二つあって、一つは自分自身のワークライフバランスをとること。もう一つは、周囲の人のワークライフバランスに気を使うということ。

これは敢えて評価軸に入れることで一つの動きを起こそうとしている面もある。他の業界から入ってくると少し異様ですらある。家庭の事情とか個人の事情とかという状況が示された途端、全員が一瞬にして偽善者に変わるのだ。しばらく業界にいるとそれが本心からだと分かってくるが、入った当初は偽善としか思えないような気持ちの悪い態度に見えたものだった(笑)。


これら全てが明示的に示され、共有された中で人事評価が行われる。
当然ながら、それぞれについて、この Cohort/Level の人ならここまでできているはず、という水準もある。つまり、評価項目×レベルごとの期待水準というマトリクスになっているのだ。

もちろん、完璧にできているとは言わないけれども、かなり詳しく精緻なこの評価基準通りに運営しようと努力しているのは事実だし、結果的に、特定の領域に集中した議論というのが常に行われる状況にある。さらに、こうした評価をもとにしながら、それぞれのメンバーを成長させるためにどうするかというのが真剣に論じられている。

それら全てがある上で、UP or OUT というポリシーが成立しているのである。

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