エクセルシート構成の基本

(読了時間=約 2 分)

今回は実戦で、エクセルのシート構成をどう考えれば良いかという話をします。

1. 入力シート

さて、前回はエクセルにとって規則正しく一様な表形式が合っているという話をしたが、その一方で、データの元資料というのは必ずしもそうなっていない場合が多い。

図5

例えば、決算短信から数値を引用してP/Lの表を作って何らかの分析かシミュレーションを行う場合、エクセルにとって計算しやすい表というのは上の図5の様な形になる。しかし、元データである決算短信は、まず、主要な損益項目の数字が連結損益計算書にあり(図6)、さらに販管費の明細は後の方の注記事項(図7)から引用することになる。

図6
図7

 決算短信を見ながら図5の表に入力していくやり方もあるが、参照する場所や入力する箇所がばらばらになるので注意しないと違うところの数字を入力したり、入力する行を間違えたりというミスが起こることになる。
これを避けるためには入力表として、入力元になるデータと同様の見た目の表を作成してそこに入力していくようにすると良い(図8)。表の見た目が同じなので、転記ミスが起こりにくくなる。

図8

 よく見ると売上総利益など図5で使わないデータも入力することになるが、都度取捨選択するよりも一気に全部入力してしまって後で必要なものを選んだ方が手間が少ない場合も多い。この場合の手間というのは、手を動かす作業の量だけの話ではない、作業に求められる注意力や後でミスをチェックする手間なども加味したものだ。

2. 計算シート

図9

入力表(図9の”IN_1″シート)へのへのデータ転記が終わったら、エクセルに合った計算用のシート(同、”Calc_1″)を別途作って入力表の該当箇所を参照させる。つまり、計算用シートと入力シートを別に作るわけだ。

3. 出力シート

同様にアウトプットの方も必要に応じて別にする。例えば、P/Lを見るのに図5のような形では見にくい。前回の最初に出した図1の様な形で見たいという人も多いだろう。その場合には出力表のシートを作成して、そこから計算結果を参照させると良い。

図1(再掲)

3つのグループでシートを構成

複数のデータソースからデータを引用したり、異なる書式・内容の資料をアウトプットとして作成するような場合には、それ用にシートをどんどん増やしてゆく。最終的には、出力・計算・入力それぞれで何枚かのシートができあがることになる。

図10

ポイント① 3種のシートをきっちり分ける

ここで大事なのは出力・計算・入力をごちゃまぜにせず、それぞれでまとめて配置すること。

ポイント② 計算の流れは一方向にする

そして、計算の流れが右(元データ)から左(結果)へと流れてゆくように表を構成すると混乱しにくい。これはつまり、別のシートを参照するときには、常に右側のシートを参照するということだ。

縦横無尽に参照をさせながら計算を進めてもエクセルは計算結果を出してくれるが、バグ(ロジックのミス)が出た時に検証がしにくくなる。参照経路をトラックするツールもあるが、元から表を規則正しく構成していればこのようなもののお世話になる必要もない。

ポイント③ 迷ったら原点に帰る

勿論、常にこのルールを厳正に守れと言うつもりはない。比較的単純な計算をする場合には、一つのシートでやってしまった方がむしろ早い。でも、だんだん検討が進み、表が複雑になってきたなと思ったら、この基本に立ち返ってシートの構成を整理することをお勧めする。

ポイント④ 「混乱しないこと」が最優先

エクセルを上手く活用するコツは、混乱しないことだ。

頭の良い人間は、複雑な表の構成になってきてもそれを使いこなすことができるので改善の必要性を感じない場合が多いが、どんな頭の良い人間でも能力は有限なのでいつかは限界を超えて混乱する。また、仮に混乱しなかったとしても、自分の表を解読して使いこなすのに多くの「思考体力」を消費してしまうことになる。本来はもっと重要な問題を考えなければならないのにだ。


エクセルに限ったことではないが、「混乱の予兆を感じたら自分の力を過信せず基本に立ち返る」というのはすごく大事なことだ。そして、どのタイミングでそれを行うかが分かること、また、その時に意地をはらずスムーズに方向転換できることは、ビジネスパーソンとして重要なスキルの一つだと思う。

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