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エクセルを使う時は、エクセルの機能を発揮しやすい形で表を作るのがいい。
結論=規則正しい構造を作る
エクセルに合う表の形式とは、縦横に規則正しく数字や計算式が並ぶ表だ。こういう表を中心に組み立ててゆくと、極めて効率的に作成してゆくことができるし、工数が減るから間違いも少なくなる。
規則正しい表形式は人にとっても分かりやすい場合が多いが、分かりやすい表がいつも規則正しい数式の並びになっているとは限らない。従って、エクセルを使う際には、我々が通常使う資料の様式にこだわるのではなく、意識的にエクセルの特性に合わせた表を選択してやることが重要になる。
文章だけだと分かりにくいので例示を使って説明しよう。

上の表は、ある会社の5年分のP/Lだ。縦軸に科目、横軸に年度となっていて、各年度は金額と、その横に対売上比率が記載されている。有価証券報告書や決算短信で見慣れた形式でもある。なお、エクセルの表構造が分かりやすいように、数式が入っているところは色付けをし、数式の種類に応じて色を変えている。
この表を作成する際には、まず売上など金額を打ち込んで売上総利益と営業利益の計算式を入れてP/Lを一旦作成する。次に、各年度の欄に売上比の列(黄色)を挿入する。対売上比率の数式は、、まずE4のセルに”=D4/D$4″と入れてE4:E8にコピーし、次にその列をG4:G8, I4:I8, K4:K8, M4:M8にそれぞれコピーする。最後に、各年度ごとの数字を区切る罫線を縦に入れる。
ということで、単純そうに見える表だけれども作ると意外に手間がかかる。

この表は、金額と売上比の表を別々に作ったものだ。一見して、色つきのセルが集まっていて表の構造が整理されていることが見て取れると思う。
作成もかなり単純だ。数字の表をまず作成し(2~7行)、それをまるごと11~16行にコピーする。コピーした表の左上の部分になるD12のセルに”=D3/D$3″を入力し、それをD12:H16に一気にコピーして書式設定すると、それだけで売上比の表ができあがる。こういう表であればそのままでも十分見やすいから、前の表の様に年度ごとに縦に罫線を入れる作業も不要だ。
手間がかからないのは表の構造を規則正しくしたためだ。
これはエクセルに合っているだけでなく、人が見ても見やすい。同じ情報を並ぶためトレンドを視覚的に捉えやすく、例えば売上原価率が暦年で低下傾向にあるといったことが容易に見て取れる。

先の表から、売上総利益の欄を削除してみた。ご存知の通り営業利益は売上高-(売上原価+販管費)であり、売上総利益をわざわざ出さなくても計算できる。売上総利益の欄を削除すると、売上高と営業利益の間に費用項目だけが並ぶことになり、表がより「規則的に」なる。
比率についても同様で、売上原価率と売上総利益率は表裏一体であり、図2では表示が冗長だ。図3のようにすると、余計な情報がなくなるのでさらに見やすくなる。売上原価率が下がる一方で販管費比率が若干上がり、その差し引きとして営業利益率が向上したという関係性が容易に見て取れるようになるわけだ。
これは費目数が多い方が分かりやすいと思うので別途例示を作って比較してみよう。

販管費の明細も加えて図2の形式で記載した。
財務諸表としてはありがちな書式だが、エクセルにとっては複雑だ。売上高、売上原価は数字打ち込み。売上総利益は計算式[D5=D3-D4]。販管費は7~13行目にある明細の合計[D6=sum(D7:D13)]。販管費明細の数字は打ち込みで、その後の営業利益はまた計算式[D14=D5-D6]。
各行ごとに数字打ち込みや異なる計算式が並ぶことになって大変面倒くさい。
これに対して下の図。

これは途中の小計欄的な行を削除したものだ。売上高から始まり、11行目にある販管費のその他までは基本的に数字の打ち込み。そして営業利益だけが計算式[D12=D3-sum(D4:D11)] となる。
表の中に計算式が入る行は一行のみであり、計算の仕方もかなりシンプルになる。こういう表にすると、数式入力の手間が少ないし、参照するセルを間違えたりといったミスの発生確率もかなり低い。
結論=規則正しい構造を作る
再度繰り返すが、エクセルは、一様で規則正しい形が好きなのである。それをアタマの隅において表を作る習慣をつけると、手間も計算間違いもなしにエクセルの恩恵を享受できるようになってくる。