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先日、若手コンサルタントにフィードバックをする機会があった。
彼女は入社後、顧客の社内に常駐して戦略の実行支援をするようなプロジェクトが長かった。それなりに実践的な経験は得られたかもしれないが、コンサル的なスタイルでの仕事に触れる機会が少し少なかったのかもしれない。
そんな彼女の課題は簡単に言うと「もっとよく考えなさい」ということだ。
マネージャーが解を示したとしても、それを鵜呑みにせず、自分のアタマでちゃんと考えて同じ結論まで到達すること。もしその仮定で異論があるならちゃんと質問すること。
そんなことを話していたら、彼女が
「結論というのは誰が考えても同じになるものなんですか?」
と訊いて来た。
なるほど、面白いことを言う。
確かに事業会社にいたときは自分も同じような発想を持っていた。
コンサルタントというのは考えるのが仕事だから、メンバーには自ら考えることを要求し、また、チーム内でも考える過程を共有しながら検討を進めてゆくのが常だ。
でも、普通の会社ではそんなことは必須ではない。
勿論、そうでない人もいるけれども、自分の考えをちゃんと言葉にして懇切丁寧に説明するというのは結構大変なことなのだ。相手の理解力の問題もあるし、できる人というのはそれなりに忙しいので時間の制約もある。
だから、多くの場合は考えを説明するというよりは、自分が思う方向性に皆を説得するという形になる。考えを説明しているようでいて、実は説得するためのロジックだったりする。だから論理的な一貫性よりは、納得性のある「ストーリー」の形をとることが多い。
これを下の人とか若手の側から見ると、ある局面の見方とか、どうすべきかという方向性は偉い人が決めるように見える。自分なりに白だと思っても、偉い人が黒だと言えば黒。納得できない顔をしているとデキる上司は、納得性のあるストーリーを提供してくれる。それを戴くと自分なりにスッキリしてその方向に向かって走っていける。
当然ながら、物事を見る視点やあるべき方向性についての結論は人によって違うこともある。だから、上司が変わると結論が変わる。あるいは、キーパーソンが複数いる場合には誰が主導権を握るかで結論が二転三転したりするのだ。
その動きに翻弄されることが宿命づけられた若手社員にとっては、キーパーソンが誰かを見極めて、その人の見方や考え方を迅速に理解することが重要になる。このスタイルにおいては、真実は極めて相対的なものだ。
でも、コンサルティング会社ではこういう考え方はしない。
事実に基づいて合理的な思考を重ねていけば、誰もが同じ答えに辿りつくと考える。結論だけでなく、途中で同じようなジレンマに悩んだりする。真実だけでなく、それに至る道も一処なのだ。
道は一つだと信じているから、メンバーを説得する必要がない。気づいてない真実を指摘し、混乱を紐解いてやるだけでいい。結論に至る途中で同じようなことで悩み、それを解決して先にゆく様を見るのは楽しみにさえなる。「1日でそこまで来たか、なかなかやるな」なんて感じを受けることすらある。
こういう状況では、説得されたがっているメンバーは、自分で歩くのをやめて楽をしようとしているように映るのである。
勿論、コンサルタントが100%合理的に考えることができるとは限らない。人間だから事実誤認をすることもあるし、個人の直感に引きずられることもある。時間や経験が足りないマネージャーはメンバーをなだめすかして自ら思う結論に誘導しようとすることもある。
でも、コンサルタントは、合理的な考えれば同じ結論に至ると「信じている」のである。立証されていないのに疑わないのだから、これは一種の信仰のようなものと言ったほうが良いかもしれない。
ここはたぶん、一般の会社で働く場合と決定的に違うところだと思う。