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ロジカルシンキングや戦略的思考法なるものを勉強し始めてよく陥るのが、「合理的に考えていけば問題が解ける」という勘違い。
課題をトップレベルイシューとして定義し、それをイシューツリーの形でブレイクダウンする。それぞれは完璧にMECE(互いに重複なく、漏れがないこと)になっているんだけど、いくらやっても何だかピンと来ない。
ロジカルシンキングの研修で参加者をチームに分けて実習始めたときに、こういう形でスタックするのを目にすることがあります。他業界からコンサルティング会社に入って来た人なども、最初の半年くらいでこういう悩みに直面したりすることもあります。
ロジカルシンキングで問題点や考え方を整理できるというのは事実です。
それで問題が解きやすくなることもあるでしょう。
でも、それで必ず解けるわけではありません。
例えば、小売業の会社の売上高を考える場合、
(1) 地域別に分けて考える
(2) 既存店と新規出店で分けて考える
(3) 立地で分けて考える
などのいろいろな切り口があります。どれもMECEな分け方ですから、どうわけてもイシューツリーとしては間違いではありません。
でも、状況によってはどの切り口で考えても良いという訳ではない。問題をスパッと解くためには、それなりの視点とか、切り口といったものが重要です。問題を解く力というのは、この様な「視点」を見つけ出す能力です。
要するに、MECEに分けりゃいいってもんじゃないってこと。
でも戦略思考法を覚えたての人は、まずこちらの方にアタマが行ってしまう。そもそも最初のうちは、イシューツリーをMECEにするだけでも精一杯だったりするので無理もありません。
じゃぁ、どうすればいいか。
お勧めは、「まず直感的に答えを考えてみる」こと。
直感だなんていい加減なって?
いえいえ、人間の直感は結構当たるんです。
特に、経験のある人の直感は馬鹿になりません。
語弊がありますが、「当たる仮説」が出てくるんです。
将棋の羽生善治さんが書いて数年前に話題になった本で「決断力」というのがあるんですが、その中でも「直感の7割は正しい」と書かれています。人間のナチュラルな思考力というのはそう捨てたもんじゃありません。また、7割という数字も、自分の経験から考えると良いセンだと思います。
もちろん、勘で出した答えをそのまま結論にするわけではありません。
答えを描いたら、なぜ自分がその考えたかを紐解いてゆくんです。一種のリバースエンジニアリングのようなものです。こういうデータがあった、インタビューでこういう発言があった。あるいは、自分の経験に根拠があるかもしれません。それぞれの根拠とそれに至るロジックを紙に書きだしてゆく。
その時にロジカルシンキングの手法を使って整理していきます。例えば、業界1位のA社と3位のC社のことを自分が考えて結論を出していたけれども、2位のB社については考えてなかった。なんてことが見えてくる。そうすると、B社についてちょっと調べてみよう、という話になる。
いわば、直感とロジックのハイブリッド思考です。
直感で導いた結論からリバースエンジニアリングして遡ってくるのと、そしてそれをロジカルシンキングで整理し、抜けているロジックの穴を見つけてゆく。途中でまた煮詰まってきたら、直感モードに戻って答えを描き、またそこから逆算で遡ってくる。
こうやって行ったり来たりしながら検討の肉付けをしてゆくと意外にハマらずに検討を進められます。
注意点は、直感で得た答えを説得するロジックにならないようにすること。
ロジカルシンキング思考で考える時には、自分を客観視し、やや批判的な気持ちで考えてゆくのが良いです。もし周囲にロジカルな人がいたら、その人に質問攻めにしてもらうのももいい。
2つの切替えがちゃんとできていれば、直感とロジカルシンキングのハイブリッドはなかなか強力です。
ビジネス経験が豊富な方、あるいはそういう人とチームを組んで働いている方は、一度試してみて戴くと良いと思います。
今日のお勧めは羽生善治さんの「決断力」。
新書ですぐに読める本ですので、まだだったら是非どうぞ。