計算シートは見れば分かるように作る

(読了時間=約 3 分)

さて、入力シート、データセットの作成ときて、次は計算シートについてのお話。

計算シートはロジカルにつくれ

計算シートを作成する際に注意すべきなのは、「計算用紙のようなシート」にしないようにすることだ。もっと言うと、プリントアウトすればお客さんにそのまま渡せるような形になっているのが望ましい。

お客さんに出すのはアウトプットシートであって計算シートは内部用じゃないか、と言うかもしれない。それは確かに事実だが、エクセルの分析やシミュレーションでは計算ロジックが重要となる。結果に疑問が示されたり、より理解を深めたいという話が出たら、計算ロジックを共有して共同で検証できた方が良い。その際にごちゃごちゃとしたシートを出して、解読してください、というのはあまりにも不親切だ。

またこれは自分のためでもある。前にも言った様に作業が忙しくなってくると思わぬバグ(計算ミス)に悩まされることがある。その時に、計算シートが綺麗に整理された形で作られていれば、計算過程を容易に追跡できるため、ミスを速やかに見つけ出すことができる。

あるいは、以前に作ったシートを加工しなければならなくなった時に、当時どう計算したかを忘れてしまった難儀した経験はないだろうか。計算シートを明快につくっておけば、すぐに計算ロジックを再確認できる。

計算シートを作ってみよう

具体的にどのようにしてシートを作るかについては細かいポイントがいろいろあるのでサンプルを使って説明する。二つの事業を行なっている会社の売上高を市場規模とシェアから予測するというものだ。

図1

 まずは一つ目の事業、パッケージゲーム事業に関する売上の算出シート(PKGシート)。

シートはこのようにあるテーマごとにまとめて作成する。そして、その中で計算過程を区切ってそれぞれで表を作成して計算を進めてゆく。

表は縦に並べてゆく。横幅はA4横1ページ分。そうしておかないと、プリントアウトした際に表が分割されてしまって見にくくなる。シートごとにプリントアウトし、それをそのまま読めば初めて見た人でもだいたい理解できるような表にするためには縦に表を並べてゆくのが良い。

計算方向はこの場合は上から下になっているが、下から上に計算して一番上に結論が来る形でも構わない。ただし、必ず一方向に計算してゆくのがポイントだ。つまり、同じシートの中で別の表を参照する場合には、常に上(または下)の表を参照するという形にする。

表の縦軸と横軸はできるだけ同じ形で作る。今回の例では横が年度、縦が地域の表にしている。こうすることで、計算式の入力が簡単になる。想定売上高は、まず [D22=D6*D14]を入力し、それをコピーして D22:I24 に数式を貼りつければ完成だ。

計算式は四則演算+αとして、セル内であまり複雑な計算をしないようにする。この図では K14:K16 だけ、シェアの年変化を [K14=(G14-D14)/3]で算出し、[H14=G14*$K14] という形で将来のシェアを算出している。セル内の算式はせいぜいこの程度までにしておく。そうすれば印刷しても計算過程が追いやすい。

図2

 今度はもう一つの事業についての売上算出(OLGシートシート)。

基本ロジックは図1と同様で、市場規模×シェアで売上高を算出する形になるので、表も可能な限り図1と同様にする。横軸を年度、縦軸を地域にして表を作成する。この事業は地域に中国が加わっている点が図1と違うが、その他は全く同一であることが分かってもらえると思う。

図の書式についても注意を払っておくことが大事だ。

それぞれの表には表題をつけ、何の表であるかを明示する。
また、単位やデータソースの注記も面倒くさがらずにちゃんと記載しておく。

年度別のデータの場合には通常、実績・見込・予測の3種類が存在するので、それが明確に分かるようにしておく。予測と実績との境界などは縦線を入れて区切っておくと分かりやすい。

左側の数セルは項目用に使うことを前提にしておく。表中のA,Bの列の様に、幅が2-3程度のセルをいくつか容易しておくと、異なるレベルの項目をインデントしながら表記することができて便利だ。

セルは、計算式の種類によって色付けをしておく。例えば、数値を直接入力したセルは薄黄色、同じシート内の異なる表を参照しているのは薄緑、違うシートを参照しているのは薄青といった具合だ。同じ表の中で異なる数式がある場合も、備忘のために色を変えておく。逆に言うと、色付けされていないセルは周囲のセルと同様の数式が入っているということだ。

図3

 算出した売上を集計して全社売上を計算する(Totalシート)。

別のシートの数字を集計する場合には、まず、そのシートから数字を転記した後、シート内で数字を合算する方が良い。図3で言うと6~7行、13~16行がそれに当たる。別シートにある数字のうちどれが集計対象になっているかが明示的に分かるので、計算過程を追う際に分かりやすくなる。

作っている側からすると冗長に思えるかもしれないが、読み手からすると、計算式を追わなくても同じ数字の並びを参照すれば対応が理解できるので非常に分かりやすくなる。習慣として身につけておくことが望ましいやり方だと思う。

ここでも数式は極めて簡単だ。
事業別集計では、[D6=PKG!D21]、[D7=OLG!D22] とした後、D6:D7 をコピーしてE6:I8 に数式貼りつけする。

地域別集計は、[D6=PKG!D22*OLG!D23] としてこれを D13:I16 に数式貼りつけする。
合計欄はそれぞれの内訳をsumで集計する。

ちなみに、今回のシートではOLGシートとPKGシートでは地域区分が若干異なっている。このため、地域別集計で上記の様に数式をコピーすると、中国の集計でPKGシートの空白部分を参照することになってしまう。PKGシートに中国の欄を設けて数字を空白にすれば、地域軸も同一になるのでこのような問題はなくなるが、PKGシートが冗長になるデメリットがある。今回はシート構成が単純なのでより簡略な形を選択したが、シート構成が複雑な場合は几帳面に表形式を合わせておいた方がバグの発生を防ぐことができて安全だ。


小技の集合になってしまって申し訳ないが、こういう細かいポイントを几帳面に維持しながら作ってゆくことで、統一感がありかつ明快なシートが作成でき、厳しい状況下においても自分を裏切らないシートとなるのである。

2 COMMENTS

西荻マン

僕は「本当はおしゃれな関数をバンバン使いたいけど、アタマが悪くて使えない派」ですが、
それでいいのだということが分かり自信を深めました。
これからも四則演算+αで頑張ります。

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sean.imam

コメントありがとう。お役に立てたようで何よりです。
今後もよろしくお願いします

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